2019年11月に新型WALKMANが2モデル発売されました。1モデル目はエントリーモデルの「WALKMAN NW-A100シリーズ」。2モデル目はハイエンドモデルの「WALKMAN NW-ZX500シリーズ」。WALKMAN NW-ZX300も所有しており、今回のWALKMANの購入は見送る予定でしたが、気が付いたら「WALKMAN NW-A105(16GB/イヤホンレス)」を購入してしまっていたので、両モデルを比較レビューします。
目次
WALKMAN A100 と WALKMAN ZX300 はコンセプトが違う
今回比較レビューするのは、2019年11月に発売された WALKMAN NW-A100シリーズ と、2017年10月に発売された WALKMAN NW-ZX300 の2モデルです。
WALKMAN Aシリーズはエントリーモデルの位置づけであり、学生からシニアまで幅広い世代をカバーしているモデル。ユーザービリティ・ポータビリティ・パフォーマンス(音質)のバランスを持った製品シリーズです。
WALKMAN ZXシリーズは言わずもがな“玄人向け”の製品であり、音楽を愛するユーザーやプロが日常生活で使うことを目的とした製品シリーズです。
今回はこの両モデルを比較レビューします。
デザインを比較!A100の勝利
ZX300とA100を並べると、A100の方がコンパクトに仕上がっています。ZX300は3.1インチ(800×400ドット)に対し、A100は3.6インチ(1280×720ドット)と、0.5インチ大型化しています。
A100は片手にスッポリ!
A100は片手にスッポリ収まります。A100は昔から引き継がれるWALKMANのコンセプト“片手にスッポリ収まる”に沿った商品に仕上がっています。片手で持ち、そのままが楽曲選択などの操作ができます。また、シャツの胸ポケットにもスッポリ入るため、満員電車でも大活躍間違いなしです。ちなみに、私のWALKMAN A100はお家とスタバ用です…。
本体寸法は約55.2×98.9×11.0mm、重さは約103g。最近のスマートフォンの重さが160g~180gであることを考えるとかなり軽量であることが分かります。
microSDスロットで容量の増設が可能な点は変わりませんが、A100から通信ポートがWMポート → USB Type-Cポートへ変更となりました。Androidスマートフォンのポートと同じとなったため、お高いケーブルを購入する費用が削減できるようになった点は非常に評価が高いです。
ZX300は圧倒的な存在感
ZX300は片手で持って操作することは可能なものの、A100と比べると、片手にスッポリ収まっているとは言い難い大きさです。その理由は筐体や電源回りのパーツの違いにあります。
ZX300は筐体がアルミ切削筐体と無酸素銅プレートの組合せで出来ています。大幅な低インピーダンスかを実現し、深みある低音域の再現が可能となっています。
また、フルデジタルアンプ「S-Master HX」のL/R正負独立4電源に「高分子コンデンサー(FT CAP)」を採用しているため、引き締まった力強い低音域の再現を実現しています。他にもZX300用に様々なパーツが採用されているおり、その1つ1つのパーツが大きく・重いため、ZX300は片手でスッポリ収まらない筐体になっています。
本体寸法は約57.3()×119.5×14.8mm、重さは約157g(+54g)。5.5インチディスプレイを搭載するスマートフォン並みの重さとなります。スマートフォンよりも厚みがあるため、ポケットを痛める原因にもなり兼ねません!
言うまでもなく、その分、音質はピカイチです。こちらもmicroSDスロットによる容量の増設が可能です。ただし、通信ポートは従来型のWMポートとなります。
デザインでは、A100シリーズに軍配が上がります。日常の移動などでスマートフォン + WALKMANというライフスタイルを実現するためには、“コンパクト”と“軽さ”は正義!
パフォーマンスを比較!
A100はサブスクリプションサービスが本命?!
A100のOSには、Android 9.0が採用されています。久々のAndroid OSの採用となり、Spotify、Apple Music、Amazon Musicなどのサブスクリプションサービスを使えるようになりました。
音楽アプリ「W.ミュージック」とEQアプリ「音質設定」がそれぞれ別アプリ化されました。W.ミュージックでは、アルバム・アーティスト・年代・全曲など、様々な軸でWALKMAN本体やmicroSDカードの楽曲を再生や検索ができます。
音響のハード面では、WALKMANの代名詞とも言えるフルデジタルアンプ「S-Master」を採用し、ヘッドホン・イヤホンでの最大出力は、35mW+35mW(16Ω)を実現しています。
MP3やAACなどの音源をハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE HX」は新たにAIテクノロジーを搭載。リアルタイムで楽曲の情景を分析し、最適なハイレゾ相当な音源にアップスケーリングできるように進化しました。
そして、1番の目玉はEQ(イコライザ)・S-Master・DSEE HXがなんと、SpotifyやApple Musicなどのサブスクリプションサービス楽曲でも適用可能な点です!Spotifyなど のAAC 320kbpsの音源をハイレゾ相当にアップスケーリングしながら再生できるため、普段より良い音質で聴けます!
ただし、CPUのパワーが非力なため、操作は全体的にもっさり。Spotifyで楽曲を聴くこと、You Tubeで動画見るこが限界レベルです。また、Android OSを搭載したことにより、全体的にバッテリーの減りが異常に早い。。。毎日3時間程度使うのであれば、2日/回の充電は欠かせません。Wi-Fiを使うのであれば問答無用で毎日充電をおすすめします。使うわないときは電源オフしなければ、スリープ状態でも恐ろしいほどバッテリーが減りますよ。。。
ZX300のパフォーマンスは意外と優れていた
ZX300のOSはSONYオリジナルの組み込みOSが採用されています。そのため、SpotifyやApple Musicの音源をZX300から直接聴けません。
音楽アプリ・音質設定アプリが一体となっているため、音楽を聴きながら手軽にEQなどを変更できます。オリジナルOSのため、A100よりもユーザビリティが優れている印象を受けます。初心者でも5分あれば使いこなせるインタフェースであり、ヤングからアッパーまでの幅広い世代に優しいです。
音響のハード面では、WALKMANの代名詞とも言えるフルデジタルアンプ「S-Master」を採用し、ヘッドホン・イヤホンでのアンバランス最大出力は、50mW+50mW(16Ω)を実現し、バランス最大出力は200mW+200mW(16Ω)を実現しています。ポータブルで200mWはかなりの出力です!
MP3やAACなどの音源をハイレゾ相当にアップスケーリングする「DSEE HX」を搭載。正直、A100と何が違うのかわかりません。
残念ながらSpotifyなどのサブスクリプションサービスを直接WALKMANで再生することはできませんが、Bluetoothレシーバーを使ってスマホとZX300をペアリングし、スマホのSpotifyをワイヤレスで飛ばすことで、ZX300からSpotifyを楽しむことができます。この機能はA100では廃止されているので、どちらが良いかユーザーの好み次第。
バッテリーのもちは断然ZX300。Android OSってかなりバッテリーを消費するソフトウェアであることを改めて認識しました。
パフォーマンス比較は「引き分け」です。
サブスクリプションサービスのA100を取るのか、ストレージに保存した楽曲を再生するZX300を取るのかはユーザーの好み次第だと感じました。
音質を比較!A100もZX300も良い!あとは使い方次第
今回の音質の比較では、SONY製のヘッドホンMDR-1Aをリファレンス機に使用しました。
A100はスマホより音質の伸びと解像度がある!
A100の音質のファーストインプレッションは、iPhoneよりもいい音が鳴っている印象を受けます。
ここから、S-Master・DSEE HX・EQを有効かつカスタマイズ設定した状態で楽曲を再生しました。
◆音質レビュー結果
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・高音の音質:★★★★☆
・中音の音質:★★★★☆
・低音の音質:★★★☆☆
・音の解像度:★★★★☆
・音の広がり:★★★★☆
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⇒ 満足度:★★★★☆
高音の音質は限りなく5点に近い4点です。iPhoneでは聞き取りにくかった楽器の音や女性ボーカルの再現性は非常に高いと感じました。特に宇多田ヒカル、倖田來未、Marooon 5、ディズニー系の楽曲にはマッチします。
中音の音質は4点です。クリアでハッキリとした音を奏でているのは分かるものの、曇りがある音の広がりがする印象を受けました。他の音に埋もれている感が否めません。中音域はもう少し頑張ってチューニングした方が良いような気がします。
低音域は3.5点です。昔のドンシャリ系のソニー音質と比べるとかなり大人しくなり、原音に忠実な音質に寄せようという努力を感じさせます。一般ユーザーなら間違いなく、心地の良い低音域であるため満足するレベルに達していると思います。しかし、ZX300を知ってしまっているユーザーからすると、低音域のパワー不足を感じます。電源容量からすると仕方ないことですが、全体的な味付けをもう少し低音域に寄せても良かったのでは?と思います。
音の解像度は4点です。立体感を感じる音質であり、まとまりがあるバランスが取れた解像度に仕上がっています。音楽に没頭できる領域に達しており、玄人でもある程度は満足できるレベルだと思います。バランスを取ったが故に個性が薄れているのが残念です。「さ行」の突き刺さり音がするよりかはマシですが。。。
音の広がりは4点ですが、厳密に言うと3点に近いです。ボーカルの声が自然に最後まで伸びるような心地よい音の広がりを感じられます。音楽の情景を感じられるようなピュアサウンド寄りな印象を受けます。今のレベルでも満足できますが、次期モデルへの進化を期待してこの点数にしています。
満足度は4.5点です。高音域・中音域・低音域ともにポータブル音楽プレイヤーとしては完成度が高いレベルに位置していると感じました。iPhoneやAndroidで音楽を聴くより、断然WALKMAN NW-A100で聴いた方が良いです!万人受けを狙いすぎ、全体的に個性が薄れ始めているように感じます。高音域か低音域のどちらかに指向を振ってみるのもありなような気がします。
A100を一言で表すと、スマートフォン以上、ZXシリーズ未満です。やはり、A100やZX300に音質面で勝つことはできません。特に低音域はZX300の方が優れています。
ZX300の武器は低音域と解像度にアリ!
ZX300の音質ファーストインプレッションは、あらゆる点でA100よりも良い音に仕上がっている印象を受けます。
ここから、S-Master・DSEE HX・EQを有効かつカスタマイズ設定した状態で楽曲を再生しました。
◆音質レビュー結果
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・高音の音質:★★★★★
・中音の音質:★★★★★
・低音の音質:★★★★★
・音の解像度:★★★★★
・音の広がり:★★★★☆
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⇒ 満足度:★★★★★
高音は言うまでもなく満点の5点です。A100と比べるともう差は歴然。素人でもわかるレベルでZX300の方が遠くまで高音が響きます。どんな曲にでもマッチします!
中音の音質は5点です。女性ボーカル、男性ボーカルともに埋もれずに、全体に広がっていく響き方をします。目の前で歌っているかのような迫力のある音を奏でており、レベルが高いの一言に尽きます。
低音の音は文句なしの5点です。アナログアンプのような独特な歪みある心地よい重低音が響きます。J-POPやK-POPのドンシャリ楽曲から、クラシックの管楽器の重低音まであらゆるジャンルをフルカバーできており、高クオリティの完成度を感じます。長時間聴いても疲れないので、何時間でも聴いていられます。
音の解像度は5点です。A100とは違った立体感を感じます。楽曲の細部の楽器の音まで分かるレベルなので、今まで聞こえなかった“楽器の音”も感じることができます。フラッグシップモデルとしては十分なレベルだと思います。
音の広がりは5点です。高音・中音・低音の3要素を引き立てつつ、音が広がるので“こもり”がなく、聴いていても何時間でも聴きたくなる味付けになっています。
満足度は文句なしの5点です。高音域・中音域・低音域のそれぞれの音域がケンカせずに、上手くまとまっています。唯一無二の存在と言っても良いクオリティに仕上がっています。私のようなミーハーな玄人まではZX300で十分なのかもしれません!
総評!A100はSpotifyユーザーにはおススメ!
・2019年モデル WALKMAN NW-A100総評:★★★★☆(4つ星)
・2017年モデル WALKMAN NW-ZX300総評:★★★★★(5つ星)
WALKMAN NW-A100の総評が星4つに対し、WALKMAN NW-ZX300の総評が星5つの満点という結果となりました。
そもそも価格が2倍異なる製品を比較すべきではなかったのかもしれません…。
結論ベースで言ってしまえば、SpotifyユーザーはWALKMAN NW-A100がベストバイ。Spotifyであれば、A100で再生している楽曲をスマホで操作することができます。A100をポケットに入れっぱなしでも操作が可能です。
ZX300はいちいち操作をする必要がありますし、重量も重いです。どちらも保有し、使い分けるという選択肢もありましたが、そもそもの利用頻度が少ない製品を両方保有するのは合理的では無いため、私はZX300をヤフオクなどで売却する予定です。
利便性 > 音質 なら、WALKMAN NW-A100、音質 > 利便性 なら、WALKMAN NW-ZX300だと思います。
私は利便性を取り、しばらくはWALKMAN NW-A100ユーザーになりたいと思います。
ソニー(SONY) (2019-11-02)
ソニー(SONY) (2019-11-02)